麻酔美人〜in HighSchool

 「こんなモノを何に使うんだよ。」
 「カエルの解剖です。」
 「本当かよ。文系が,解剖?」
 「何ですか,山瀬さん。文系はカエルの解剖をしちゃいけないんですか?」
 「イヤ,そう言う訳じゃない。尤も,君は昔から真面目だったからな。変な使い方はしないだろう。
 何せ,うちの慎太郎とは幼稚園の頃からの付き合いだからね。」
友人の親が経営する薬局で,ある液体を買い求めた。劇物なのだが,何とか頼み込んでやっと売って貰えた。
 僕は,私立高校で高校生をやっている。学校の理科室にあると言えばあるのだが,
生徒の分際で持ち出せる訳がない。理科の先生や,科学研究部に所属していれば弁解の余地はあったのだろうけれど。

 翌日。
 僕のクラスにて。僕は高校3年・18歳だ。
 「ねえねえ,純也君。放課後,ちょっと付き合って欲しいんだけど,今日予定ある?」
休み時間に僕に声を掛けて来たのは,児玉のぞみと言うクラス1番の美人だった。
純也とは,僕の名前だ。僕のフルネームは,柿崎純也。彼女は,成績は中ぐらいで,
部活はチアリーディング部に所属している。僕の学校は,夏の高校野球では常連校と
言われているので,彼女等の姿をTVや実際の球場で目にした事がある方もおられると思う。
 「いいや,何もないけど。何,用って?」
 「ウウン。大した事じゃないけれど,すぐ終わるから。」
 「・・・解った。放課後だね。」
 「ウン。3階の個人面談室に居るから。」
個人面談室とは,読んで字の如くの部屋で4畳半位の部屋だ。
気になってそれからの授業に集中出来なかった。極み付けは,体育で跳び箱から落ちた事だろうか。
しかし,声を掛けられてからの5時間はあっと言う間に過ぎ去った。

 終礼が終わると,即効で3階の個人面談室へ向かった。僕の教室は,2階にあるのだ。
校舎が細長いので,フロアーに教室が数え切れない程あるのだ。だから,3年と言えども2階に教室があるのだ。
3階には,個人面談室と視聴覚室,美術室がある。
僕は,個人面談室のドアを開けた。
まだ,彼女は居なかった。・・・と言っても,僕は起立・礼が終わったと同時に教室を飛び出してしまったのだから当たり前か。
5分もしないうちに彼女もやって来た。
 「純也君!来てくれたんだあ。」
 「当たり前だろ。児玉のお願いとあらば断る訳にはいかないよ。」
 「ウン・・・有り難う。・・・・・あのね,勉強を教えて欲しいの。」
 「えっ,べ・勉強?・・・下から数えた方が早い人に何を聞こうって言うの?」
僕が真面目だと思われているのは,僕が面倒臭がり屋で授業中,周りの人と会話をするのを嫌っているだけで,遊ぶ事は大好きだ。
趣味は鉄道研究で,何時でも大好きな北海道の特急電車の事ばかり考えている。
 「・・・これ・・・」
それは,鉄道研究の入門書だった。わが学校では,情操教育とか言う補助授業がある。趣味を学校公認で楽しんでいいのだ。
僕は,勿論「鉄道」コースを選んだが,いまだに理解出来ないのは,児玉のぞみがこの授業に参加している事だった。
確かに名前は,東海道新幹線の列車の愛称に似ているが,それだけで選択科目を選ぶ訳がない。
旅行好きと言う訳でもない。かと言って,無趣味な訳ではない。チアリーディングもそうだし,また編物も好きだ。
手芸コースもある。・・・そうだ,今日聞いてみようではないか。
彼女の質問は,「難読駅名」をパズル形式で紹介したページであった。
「一身田」(いしんでん)とか「善所」(ぜぜ)とか「温泉津」(ゆのつ)とか,
僕にとってはヒマな内容なのだが,彼女に一生懸命ヒントを与える。
 「放出」と言う駅の読み方である。
 「最初の1文字を色々に読んでご覧。」「『出る』を少し崩してご覧。」・・・・・・・
傍から見ていると訳の解らない言葉だが,「仲間内の隠語」で会話が成り立っていると考えて頂きたい。(因みに答えは『はなてん』)
 こんな感じで,勉強(?)をしていた。すると,思わず尿意を感じた。
 「・・・ゴメン。ト,トイレに行かせて。」
 「いいよ。私,少し自力でやってみるから。」

 僕は,トイレですっきりして来ると,面談室のドアから中を覗いてみた。
彼女は黙々と問題に取り組んでいた。趣味でもないのに一生懸命覚えようとしている。それがたまらなく可愛かった。
僕が趣味人だからと言う訳ではない。ただ,その一途の姿が可愛いのだ。
 恥ずかしい事だけれど,僕は彼女の後姿を見ていたら息子が元気になってしまった。もっこり膨らんでいる。
彼女の後姿は,結構乙なものだ。彼女の顔が綺麗だから,というだけではない。
美人は兎に角冷たく見られがちだが,彼女は明るい性格で人気者だった。何時も明るい笑顔を見せている。その笑顔が頭に浮かんできた。

 僕は,思わず彼女を手に入れたくなってきた。僕は,ポケットに手を入れた。そこ
にはビニール袋に入った湿ったハンカチが入っていた。勿論,この間買った液体で濡らしてあるのだ。標的を捜し求めていたのだ。
 僕は,ドアを閉めた。9月の中旬,まだクーラーが効いている。開けっ放しでは,冷風がもったいない。
だから締め切った。彼女は,音に反応して振り向いたが,僕と解って,
 「長かったね。」
 「・・・うん・・」
 「純也君。これ,何て読むの?」
 「石動(いするぎ)だよ。北陸本線だね。」
僕は,後ろから答えた。彼女は,ある程度問題を解き終え,一休みと言う感じで溜息を吐いた。
 僕は,推理小説も好きで誘拐・拉致シーンをよく目にする。だから知っているのだが,
クロロホルムというモノはハンカチを口に当てただけでは失神する事はまずないそうだ。大きく吸い込まなければ意味がないそうだ。
つまり溜息,と言うより深呼吸はこっちにとってラッキーだ。
(のぞみ,勉強は止めにしてお昼寝しませんか?)
と思うと,ハンカチを手にした。と,そこへ彼女が振り向いた。ハンカチを見られた。
 「凄い汗だね。温度下げれば?」
とコントロールパネルの前へ歩いて行った。クロロホルムで湿ったハンカチを汗だと
勘違いした模様。それは好都合だ。立ち上がったことだしね。
 僕は彼女の後ろに走り寄って,ハンカチを彼女の口に覆い被せた。
 「むぐっ・・・むぐーっ・・・むーんっ・・・」
突然の事に驚いて,大きく息を吸い込んでしまった。それでも抵抗するだけの意識はあるようだ。そこでハンカチを抑える腕に力を込めた。
 「むぐーっ・・・むーーんっ・・・むっ」
まだ抵抗している。しぶとい女だ。とっとと寝ろ。段々腹立たしくなってきた。し
かし,その時だった。
 「むーんっ,ど・う・し・て・じゅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼女は僕に身体を預けるかのように脱力した。気を失った。
 (とうとう児玉のぞみを手に入れたゾ”!!)
 興奮してしまった。
 彼女は,身長168cmという高身長,B86・W59・H86といういい身体を
していた。普段は肩より少し長い髪をポニーテールかストレートヘアーのままにしているのを,今日はお下げにしていた。
それが妙に艶やかに見えた。更に彼女の姿が綺麗に見えるのは,制服のせいだろう。
半袖のブラウスに黒一色のミニスカート。これが正規の長さだと言うから呆れてしまう。近所の変態親父のいい餌食にされている。
でも,「ブラウス+スカート」の組み合わせは大好きだ。
特別授業と女子の制服と大学の付属校である事,この3点でこの学校を選んだのだ。
 彼女の黒いミニスカートから伸びる白い美味しそうな守口大根は良く熟れている。
 ブラウス越しに黒いブラジャーが透けて見えている。僕は,彼女の寝姿に見入ってしまった。何とも形容し難い美しさだ。
僕は,彼女の顔のそばにしゃがむと,思わず口づけをした。甘い香りがした。僕は,クラスもとい学校で一番の美少女とキスをしたのだ!
 彼女とは,山瀬君と同じく幼稚園から同じ仲だが,異性と言う間柄も手伝って挨拶と必要最低限の会話以外のお喋りはした事がない。
 それにしても,もがきがちょっと短い感があるのは気のせいだろうか。
そりゃ,襲った瞬間はとっと寝ろと思ったが,冷静になったら物足りなくなった。眠ってし
まったのだから,もう無い物ねだりという事になるのだが・・・。

 暫くして,彼女は目を覚ました。
 「ううっ・・・きゃあっ。」
 「やあ,お目覚めかい。お嬢さん?」
 「・・・・・ひ・ひどい・・・好きだったのに・・・・・ホラ,純也君ってお下げ頭が好きだって聞いたから,私らしくないお下げ頭にしたのにい・・・・・・」
 「え?今,何て・・・・?」
 「・・・・・・・・・ひどいよお,純也君。私,純也君の事が好きで・・・・・それが言いたくて・・・それでここへ呼んだのに・・・・」
と泣き出してしまった。僕は,今の話を聞いて思わず土下座をしてしまった。
 「ゴメンなさい!!許してくれ,忘れてくれとは言いません。警察に突き出すならどうぞそうして下さい。
 先生にちくるならどうぞちくって下さい。あなたの気も知らずに,酷い事をしてしまいました。本当に済みませんでしたっ!!!」
僕は,床に額を擦り付けて謝罪した。彼女はそれを見て,泣きながらも微笑んでくれていた。
でも僕は頭を下げているから見えない。彼女は,しゃがむとこう話し掛けてくれた。
 「純也君,もういいよ。そんなに反省しているなら,もう怒らないよ。・・・・・・ねえ,純也君は,女の子の身体の何処が好きなの。おっぱい?
 それとも,やっぱりお股?」
 「・・・・・・・・・・お・・なか・・」
 「えっ?お腹なの,純也君が好きな場所って?」
 「ウン。」
彼女はそう言いながら,ブラウスの上からお腹を見つめていた。
暫くそうしていたが,
 「純也君って,可愛いね。それに格好良いよ。電車の知識は完璧だし,優しいし。それに,変なクスリを使ったけれど,
 でも純也君の事,嫌いになんかなってないよ。」
 「・・・僕も好きだったんだ・・・でも,言えなかった。幼稚園からの付き合いなのに・・・」
 「ほんと,不思議よね。ずうっと一緒だったのに思いが言えなかっただなんて。」
二人で思わず笑ってしまった。
 僕達は,学校で1番のベストカップルになった。生徒会の中で,政党みたいな派閥があって,
中に右翼的な変な奴らが居て,変に言い触らしているのを除けばいたって幸せな時間であった。

 それからは毎日,1日に1回お腹を触らせてくれるようになった。
僕が33歳で事故死するまで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
                               The end

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