麻酔王国<初の手術1>

 第3話は,被害者の少女達の事をお話ししようと思います。
 まず,すでに最低2人の少女が犠牲になっている事にお気付きかと思います。
 1人目は,大塚麻衣。彼女は,日本で言う自衛隊に当たる国分隊に志願した女性士官で,当時19歳でした。
背は中肉中背でしたが,体力はあったので国分隊に向いた人だったのですが,特別任務隊に配属され,
突然,例の手術室へ連れて行かれ命を失ったのでした。
 彼女は,「人体実験を行うから手伝え」みたいな事を言われ,手術室へ向かいました。
しかし,手術台の上には誰も居ませんでした。不審に思い,責任者に尋ねると思いもよらぬ返答があったのです。
 「君が実験を受けるのだ。何,心配する事は無い。臨床実験のつもりで居てくれればそれで良い。
 殺すような事は絶対にしない。だから,大人しくこの手術台に横になってくれないか?」
 彼女は,これが特別任務の一環であると確信し,恐怖を感じながらもベッドに横になったのです。
すると,手足を金属製の拘束ベルトで押さえ付けられ,責任者が麻酔マスクを手に彼女の顔を覗き込んできました。
 「それでは始めますよ。大人しくしてて下さい。」
 そう言うと,いやらしい笑みをこぼしました。彼女は,これがただの人体実験でない事を悟ったのです。
今まで,多少スケベな事でも,出世の為・これも仕事だと思って言う事を聞いておりましたが,
こればかりは素直には従えません。彼女は,恐怖心を募らせました。
しかし,もしかしたら本当に機密事項に関わる手術実験なのかもしれない。今の笑いは,私が怖がっているので,そう見えただけ。
そうとも思えだしました。でも,怖いものは怖いので,思わず悲鳴をあげてしまいました。
 「キャ,キャア―――――――ッ!!」
 「始める!」と責任者が言うと,天井の手術ライトが明々と点灯しました。彼女の顔は,恐怖におののいていました。
それに構わず責任者は,麻酔マスクを彼女の顔に近づけました。
 この麻酔マスクと言うのは天井から伸びていて,麻酔ガスの量をマスクに内臓のセンサーが,
肌の細胞から年齢を感知し,自動調節されるように出来ていました。それは実験台,
つまり素体が死亡しない様にと言う配慮からでした。そして,使用後は天井へと戻っていきます。
 とうとうマスクが顔に押し付けられました。口と鼻がマスクに覆われてしまいました。
マスクは真っ白の強化プラスチック製です。マスクからシューシューとガスの音がはっきりと聞こえてきます。
 彼女は,顔を左右に振って抵抗しています。しかし,マスクが厚く出来ているので何を叫んでも聞こえません。
彼女の目尻に涙が浮かんでいます。しかし,マスクを抑える手を離そうとはしませんでした。
目がトロンとしてきましたが,まだ意識はあるようです。顔をはかなくなった力を振り絞って左右に振っています。
きっと,抵抗すればするほど呼吸が荒くなって,ガスを吸ってしまうのでしょう。
しかし,マスクが不透明で何を言っているのか全く解りません。透明なら読唇術が使えるでしょうけれど,こんな状態では無力です。
 マスクを顔に当ててから3分ほど経ちました。彼女の抵抗が急速に弱々しくなって来ました。
そして,一筋の涙を流しながら目を閉じてしまいました。
 麻酔が効いて意識を失ってしまったのです。それなのに,もう1分ほど当ててから,
クロロホルムを染み込ませたハンカチを更に3分ほど,顔に押し当てていました。
 責任者――三田という男は,色々ボタンのついた操作盤を操作します。操作と言っても,ボタンを順番に押していくだけですが。
Uと書かれたボタンを押しました。すると,彼女の着ている服をはだけさせたのです。彼女は,チャイナドレスを着ていました。
指示したからです。その前をはだけさせ,床には落とさず,なんと言えば良いか,服がシートのようになっているのです。
(お解りになりますか?いらっしゃったら,私に代わって説明をしてあげて頂けませんか?)
 冗談はさておき,彼女は下着のみの丸裸で,広がったチャイナドレスの上に乗っかっているのです。
 さて,ここで一旦終わりにしたいと思います。
 思い出すだけで,背筋が凍るのです。ちょっと時間を置いて,落ち着いたらお話したいと思います。
今回も短文になりましたが,お読み戴き有り難う御座いました。ではまた。
                                      
                       つづく

戻る