麻酔王国<次は私の番・・・>

 三人の少女が,廊下に座っています。
 三人とも,手術の事など知る由も無いので,これから何をされるのか考えているのでしょう。うつむいています。三人の名前は,角田由香里さん(15),上田月代さん(14),上田華代さん(14)。上田さんは双子です。
 由香里さんは,最年長なので堂々としているつもりでした。上田姉妹は,「体育座り」をして丸くなって震えているのに,由香里さんは脚を広げ,前を見据えていました。でもやはり恐いようです。
 三人の座る床が濡れています。オシッコを漏らしてしまったのです。
 この三人の少女は,ある作業の順番待ちでした。
 ちょうど日焼けサロンのカプセルに似た機械がありました。それは洗脳効果のある光線を発するモノでした。3台あるうち2台が稼動中です。中を覗くと,ブレザーの制服姿の少女と巫女装束姿の少女が,今まさに洗脳されていました。口許にはエアーマスクが装着されています。洗脳効果の成果か,目がトロンとしています。
 このカプセルは,国分隊員以外,つまり国立学校の児童・生徒を手術するのに使われる機械です。
 巫女装束の少女のカプセルがピコンピコンと鳴りました。タイマーが時間を知らせているのです。一人60分かかります。
 ふたを開け,エアーマスクを外すと,耳元で何か言葉を囁くと,彼女は静かに目を閉じました。マインドコントロールしたのです。
 巫女さんの名前は,鶴見紀子さん(17)です。彼女は,そのまま手術室へ連れて行かれました。残ったブレザー姿の少女は,堤香奈さん(17)で,紀子さんの学校の同級生です。香奈さんは,肩まであるお下げ頭をした,純粋無垢な大人しい娘でした。
 大塚さんや保科さんの手術の経験をもとに,色々改善をしたところがあります。
 麻酔ガスは,笑気ガスを使用しておりましたが,麻酔に時間がかかり,また,口許が緩んで笑っている様に見える為,気になるとして,気化クロロホルムを用いる事にしました。それによって布による麻酔を省く事が出来ます。その代わり,マスクによる気付け(アンモニア)を,布による方法に変更となりました。
 鶴見さんは,お腹のみを改造する素体でした。
 顔には風邪用の布製マスクをつけ,手足をいつもの様に拘束し,お腹を剥き出しにされ,三田の来るのを待っていました。
 彼女の顔の上で,指を鳴らすと,彼女はパッチリと目を開けました。三田が現れると,助手が目覚めさせたのです。

 「それでは開始する!」

 そう言うと,運動後に用いる携帯用の酸素マスクを彼女の口許に押し付けると,シューと言わせてガスを噴射しました。麻酔ガスが入っていたのです。
 あとは,大塚さんや保科さんの手術と同じ段取りで改造されたのでした。

       つづく

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